スノースタルジー


地元の駅に降り立つと、一面の雪。傘を差し、靴を濡らしながら足早に家に帰ったのだけれど、その道中にふと、北限の地にある故郷を思い出した。

たぶん小学生の頃。大雪が降ると実家の前の道路では、雪にはまり抜け出せない車がきまってタイヤを空転させていた。何度となく聞こえるアクセル音。

そんな時、嘆かわしさと使命感を合わせたような雰囲気、そして「あぁ」という溜息と共に、父と兄が防寒着を着て外へ出る。もちろん自分も、彼らの真似をし、急いで外へ出る。

事情なんて聞かぬまま、彼らは唸る車の後部を押し始める。運転手はそれに気づきながらも、車の外に出てくる訳でもなく、押されるタイミングと合わせてアクセルをふかす。もちろん自分も彼らの真似をして、押す。けれども間違いなく、非力な自分は役に立っていなかった。

結局車は雪から抜け出す。そして運転手は、ようやく車の外に出てきて、本当に申し訳なさそうにしながら、我々に謝意を述べる。そして車に乗り去っていく。

自分が全く役に立っていなかったのは分かっていたけれど、走り去る車を見ながら達成感と満足感を感じ、そして漠然と「よかった」と思っていた。


高校生の頃。深々と雪が降る真冬の夜中に外を歩く。寒さに震えながら、誰の足跡もついていない雪面に、自分の足跡をつけながら歩く。時に踏みしめながら、時に粉のような雪を蹴りながら。時に後ろを振り返ったり。

真冬の中でも雪の降る日、特に真夜中はとても寒くて静かだった。そして白い。色がほとんど無い世界。一人ぼっち。

でもなぜか、胸は躍っていた。自分の歩いている道が、非現実のように思えて。雪と自分だけの世界を楽しみながら、歩いていた。そして自分の未来に思いを馳せていた。


こんなスノースタルジーに浸った後、「明日は電車が動くんだろうか」とふと心配になったのだけれど、ああ自分も大人になったんだ。


そういえばちっちゃい頃は、雪が降ったって傘を差さなかったんだけどな。

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